夢の扉:生活童話風
今回の作品は生活童話風の作品です。
シンプルでほのぼのですね。
最初に創作した作品ですが、どうも
満足しなくて、そのあとで、色々と
書き直しているうちに、
ファンタジーとセラピーの作品が
出来てきました。
創作はお面白いもので、気持ちの現われが
作品になるのかもしれません。
創作は様々な表現ができるでしょう。
登場人物
美咲:知人の親方に誘われて、美咲の自宅の
建設現場で
ガードウマンの仕事をやっている。
コタロウ:美咲の家の飼い犬。小さい頃か
ら家族と生活を
共にしてきた15歳の柴犬。
母:美咲の将来を心配しているが、現在は
1日も早く普通の
仕事についてほしいと願う。
地方に単身赴任している父に代わって、
家庭を守っている。
親方:美咲の町内に住んでいて、
美咲の小さい頃からの知り合い。
建設現場の親方でもある。
「夢へのトビラ」
「コタロウ、何やってんの!」
その声に、母が玄関に、
「美咲どうしたの・・・」
「うん、桜の下で盛んにあばれてるみたい」
「そういえば、今朝、ピアノのカバーを引っ張
ってたわ」
美咲はなんで?という顔に。
「母さん、コタロウもう15歳よ」
「そうね、美咲が小学校に入学の時だから」
「そか、じゃあ、おじいちゃんか」
柴犬のコタロウは美咲の小学一年からの家族です。
今年も庭の陽光桜が満開の季節となりました。
この桜は、美咲が生まれたときに母親が、
美咲の成長を願って植樹したものです。
「行ってくるね。おっと、ヘルメット」
「きつい仕事だから気おつけるのよ。
いい仕事ないかしらね」
「うん、むつかしいんだ。でも、近いからね」
母は温かな眼差しを美咲に、
「はい、お弁当よ」
美咲は母からお弁当を受け取ると、
チラッと陽光桜に目をやり、出かけていきました。
「はい、次の車どうぞ。二番目に入れて~」
「美咲さん、いつものあの威勢のいい、
『もたもたしてないでお兄さん!』が、
ないねえ」近くの職人からの声に、
「うん・・・」
今朝、現場に向かう途中に見た、
新人社員たちを見たのが響いてい
た、美咲です。
美咲は、アルバイトで建設現場の
ガードウーマンをやっていました。
太陽が春霞の中に真上に見え、お昼の時間
を教えています。
建設現場近くの小さな公園、
美咲がベンチに腰掛けて休憩して
いました。お弁当箱をしまっている時、
ブランコの先から犬が駆けてくるのが見えます。
「あれ、コタロウ?・・・こたろう~」
立ち上がろうとした美咲の足に、
コタロウがまとわりつき、
嬉しそうに美咲に顔を向けました。
コタロウが何かをくえています。
「コタロウどうしたの、それ?」
美咲はコタロウの口から紙包を取ると、
「くぅ~ん」と一声。何か伝えているようです。
「あれ、これって、タイムカプセルに埋めた・・・」
庭に埋めた未来への手紙が、今年でちょうど
15年でした。
「そか、確かに・・・もうすっかり忘れてたわ」
美咲は泥に汚れた手紙をビニールから取り出し、
開きました。
「懐かしいわ。え、私が・・・そうだったんだ。
コタロウおいで」
美咲はコタロウを膝に乗せると、未来の手紙を
ポケットに。
食後のこともあり何となく夢ごごちな気分に
なって、~~~
美咲の顔がコタロウの背中に重なりました。
そうだわ、小学生の頃は母に教えられてピアノ
に夢中になって。
でも、父の転勤とか自分の病気とか母の病で
短大も中退したし、
色々あって、自分の気持って・・・。
『ほら、前を見てください。トビラが見えますね。
さあ、開けてみましょう』
誰?・・・。
美咲はベンチから腰をあげると、
トビラの取手に手をやり
ゆっくり引きました。
『さあ、勇気を、一歩を踏み出しましょう』
中に一歩入ると同時に、コンサートホールの
スポットライトが、美咲を浮きあがらせます。
『それではみなさん、本日のピアニスト、
大空美咲さんをご紹介します
。大空美咲さんどうぞ』
大きな拍手がホールに響きます。
「みなさん、こんにちは。大空美咲です。
よろしくお願いいたします」
挨拶が終わり、美咲が椅子に座ると、
司会者が、
「今日の演目は
チャイコフスキーのくるみ割り人形、
花のワルツです」
館内に花のワルツのメロディーが、
♫~♪~♪~♬~♪~♫~♫。
~~~
コタロウが美咲の手をペロッとした時、
「美咲さん~!!仕事に入ってな」
遠くから監督の声がしてきました。
「あれ、私って・・・?。コタロウ」
コタロウが目を細めて膝の上で美咲を
見つめています。
「そうなんだ。
コタロウが私の夢を覚ましてくれたのね。
ありがとうね。私、頑張るから。仕事いこ」
「ワンワン」嬉しそうに尻尾を振るコタロウ。
「お、コタロウか。久しぶりだな」
「監督さん、私やっぱり専門学校に行こうと思うの。
考えたんだけど、諦められなくて・・・」
「美咲ちゃん、前に言ったことあったよね。
そうか、頑張りな。 俺も応援するわ」
「コタロウ、一緒に帰ろ。待っててね」
美咲は誘導ライトをさっとあげると、
「お~らい、だめだめ、順番だから。
そっちの車、先にどうぞ」
コタロウが愛くるしい顔で美咲を見つめています。
今までより数倍明るい美咲の声が、
春の風に舞っていきました。
おわり。
あとがき
1.美咲が全くカプセルのことを忘れて
いるのはおかしい。
たとえ、そのときは忘れていても、
コウタロウのことから思い出すはず。
2.美咲の年で、23歳ぐらいか、
ピアニストになるのは、
無理。専門的なことは、
3歳ぐらいから始めるし、
大学も音楽関係の大学にいくはず。
3.今どき、普通に高校までもしくは
短期大学とか、行った女性が、
ガードマンになることが不自然である。
=そもそも美咲の設定に無理がある=
こんな感じもあるんですが、所詮は素人の創作する
物語です。完全無欠を求めると書けなくなります。
自分と折り合いをつけながら、自分が納得できる
範囲で創作することから、楽しんで書くことができる
と考えています。
完璧な作品はプロに任せて、自分は自由に言葉を選択して
物語の中に自分が自分らしく感情移入できればいいと
思っています。そんな感じで創作している物語でした。
次回はあまり創作する人のいないであろう、
物悲しい作品です。
コタロウの命の叫びを物語にしてみました。